秋田県医師会 白根病院 鈴木 裕之

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食べ過ぎて
すぐ横になると病気になる?


 「胸やけ」と聞いてみなさんなにを想像しますか?飲み過ぎた翌日?食べ過ぎた夜?そうですあの胸が焼けるような感じです。誰もが一度は経験しているみぞおちから胸、背中にあがってくるあのいやーな灼熱感です。その時、思わず動きが止まってしまった方もいらっしゃるでしょう。英語では「heartburn」といいます。症状は同じ「焼ける」と表現していますが、症状を感じる場所は「胸」と「心臓」と表現が違いますね。そしてその原因は胸でも心臓でもない「食道」にあることが多いのです。

 「胸やけ」は胃酸が胃から食道へ逆流したときにおきます。食道と胃のさかいめには逆流しないような仕組みがあるのですが、太ってきたり、年をとってきたりするとこの働きが弱くなってしまうのです。また、食べ過ぎなどで胃の内部の圧があがることによっても食道への逆流が起こります。食道は胃と違って強い胃酸に耐えるようにはできてはいません。ですから胃酸が逆流するたびに、だんだん荒れてきます。これが「逆流性食道炎」です。「胸やけ」のほか、酸っぱい物が込み上げてくる、せき・のどの痛みや異物感、そして耳鳴・難聴といった症状をひきおこすこともあります。重症化すると強い胸の痛みが起こったり食物が通らなくなったりします。この「逆流性食道炎」は若い方でもおこりますが、お年寄りの特に女性に多い傾向があります。

「胸やけ」が起こったらどうすればいいでしょうか?

 まず牛乳を一杯飲みましょう。牛乳がない、牛乳が苦手というときは水でもかまいません。一杯でだめならもう一杯飲んでみましょう。たいていはおさまるはずです。要は逆流した物を洗い流して、食道をきれいにすることです。水より牛乳の方が効果的なのは食道の内面に牛乳の膜ができて、胃酸の攻撃から守ってくれるからです。この方法は誰でもどこでもできますし、安上がりでよく効きますからぜひお試しください。

「胸やけ」の原因が逆流性食道炎だったときの治療法

 まず食生活の改善が大切です。食べ過ぎ・飲み過ぎをしない、チョコレート・コーヒー・紅茶・お酒・油っこいもの・刺激物・ミカン類・炭酸飲料を控えるといった食事中のことだけでなく、それ以外にも食後二時間くらいは横にならない、寝る前二時間は物を食べない、上半身をやや起こして寝るといったことで食道への逆流を防げるのです。肥満、前かがみ、衣服やベルトの締めすぎには胃に圧をかけますので避けましょう。お薬としては胃酸を抑えるお薬(H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害剤)が効果的です。このうちプロトンポンプ阻害剤は昨年から長期間にわたる投与ができるようになり患者さんに大きな福音となりました。それでもよくならないときは手術によって逆流を防ぐこともあります。いずれにしても、食べてすぐ横になると”牛“にならずに逆流性食道炎になるといった方が正解かもしれませんね。
 
 「胸やけ」がなかなか治らないときは「癌かもしれない。胃潰瘍かもしれない」と思い悩まず、われわれにご相談ください。確かに「胸やけ」は逆流性食道炎だけでなく狭心症や胆石症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などでも起きます。また「胸やけ」をきっかけにして癌が見つかることもあります。ですから受診するときは胃カメラ、つまり上部消化管内視鏡検査を受けるつもりでいらしていただきたいと思います。内視鏡検査は確かに楽な検査ではありませんがわずか五分で診断がつき、治療も決まります。もし何も悪いところがなければあと一年間は内視鏡検査はやらずに済みます。病気を気にしているとストレスから「胸やけ」がかえって悪くなることもあります。心配していても病気は治りません。病院を受診して、病気も心配も吹き飛ばしてみませんか?